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「……何」

「やっぱ絵うまいなぁと思って。どうやったらそんなにうまく描けるの?」


 真剣な眼差しを送ると、洋一は少し驚いたように目を丸くした。それから真紀から顔を反らす。


「別に、うまくはないけど」

「でも私よりちゃんと描けてるじゃん。なんかコツ教えてよ」


 引き下がらない真紀に、洋一は、仕方ないな、と呟いて話しはじめた。


「まず、ものをよく見る。これが基本」

「よく見てるつもりなんだけど」

「見方が悪いんだ。対象の全体を掴む。バランスを見るんだ」

「バランス?」

「そう。お前、端から順に描くだろ」


 言われてみればそうだ。頭から描きはじめる。


「全体のバランスをつかんで、点から線を生み出すのが一番うまくいく方法だな。まぁ俺流だけど」

「へぇー」


 洋一の説明に思わず感嘆してしまう。


「こらお前ら、喋ってばっかいないで手も動かせよー」

「すみません」


 ふいに先生の声が飛んできて、真紀は頭を下げた。洋一も黙る。
 改めてスケッチブックに向き直り、先程言われたことを思い返してみる。

 全体、点、線。バランスよく描くには、観察が最重要項目。

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