・53 「本当にそれでいいの?」 「うん! ありがとう、真紀ちゃん」 出口に向かう道すがら、真紀に買ってもらったものを眺めながら嵐が頷いた。 その手には、ヒトデの形をしたピンバッジが二つあった。オレンジと黄色の二色。 「筆箱につけるんだー」 楽しそうに言う嵐に、真紀は喜んでいるならいいか、と思い直した。 「なんか、色々あったけど楽しかったね」 ふいに光が言う。 「これならいい思い出になるかも」 「だね」 光と二人で笑っていると嵐が口を挟んでくる。 「え、これでおしまい? もっと色んなとこ行こうぜ? 今度は山とかどう?」 「嵐、現実を見ろ。俺たち受験生なんだぞ? 大体来週からまた課外授業でそんなことしてる暇ないだろ」 洋一の的確な突っ込みに嵐が口をつぐむ。 「で、でも真紀ちゃんだって行きたいよな!」 「えっ、私?」 突然ふられて返答に困る。 「遊び行きたくない?」 「行きたくなくはないけど……」 「じゃあ!」 「でもやっぱ受験生だし……」 一度ぱぁっと華やいだ顔が一気に暗くなった。 [*back][next#] |