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「ごめん、ちょっと具合悪くて……」
自分の体を抱くようにして呟く。
「……いつから」
低い声が聞こえて振り向くと、険しい顔をした洋一が立っていた。
「……電車、乗ってるときから」
「そんな。何で言わなかったの?」
「すぐ良くなると思って……」
俯く光はそのまま倒れてしまいそうで、真紀は咄嗟に肩を支えた。タンクトップから伸びた腕は、冷えきっていた。
「とりあえず休ませよう。ほら光、立てるか」
「ん……」
壁伝いに立ち上がる光。肩を貸そうとする真紀を遮って、洋一が後ろから光を支えた。
「こいつ連れてくから、嵐たちは水族館見てこい」
「え……」
思いがけない言葉に真紀が声を上げる。
「私なら、大丈夫だから。せっかく来たんだし……」
「でも」
光を放って自分たちだけ楽しむなんてできない。そう言おうとしたのに、洋一がまた遮った。
「いいから。言ったろ、俺は保護者代わりだって」
「…………」
微笑む洋一に何も言えなくなって、小さく頷くしかなかった。
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