・4 「ごめん」 「いいよ。私は別に。にしても、卓哉くんて妙なところきっちりしてるよね」 真紀の言葉に、卓哉が首を傾げる。 「だって、映画断るのだってメールひとつ送れば済む話だし。なのにわざわざロビーまで来てくれたんでしょ?」 「それは! だって約束したのに、しかも俺から誘ったのに、顔見て断らないなんて、男じゃないし……」 言いながら俯く顔はだんだん赤くなっていく。 「それに」 「それに?」 「先輩の顔が見たかったんです! じゃ、俺バイトなんで! また明日!」 真っ赤な顔で立ち上がった卓哉は、走るように去って行った。 残された真紀も、言われたことをだんだん理解して徐々に顔が赤らむ。 (あ、バイト頑張ってって言うの忘れた) 振り返り卓哉を探すが、もうそこに姿はなかった。さすが、バスケ部だけあって足は速い。 諦めて椅子に座り直すと、さっきまで卓哉が座っていた椅子に別の人が座っていた。 [*back][next#] |