・39
薄暗い水族館の中、上からの光りが差し込む水槽は神秘的な輝きを放つ。その中で泳ぐ魚たちはまるで全く別の世界の生き物のように見えた。
「カクレクマノミって、あの映画のやつだよね?」
「実物はそんなにかわいくないな」
「でも綺麗〜」
四人で水槽を覗きこみながら話す。
外の熱気とは違い、建物の中は冷房が効いていて少し肌寒かった。
可愛らしかったり、どこか不思議な形だったり、色んな魚を見ながら進んでいく。
「あ、ねぇねぇ、ペンギンだって! 光ペンギン好きだったよね……光?」
光の通学鞄についていたペンギンのぬいぐるみを思い出して振り向くと、さっきまでいたはずの光がいなかった。
「あれ? あいつどこ行ったの?」
「…………」
「道に、迷うわけないよな。一本道だし」
「私、ちょっと探してくる」
「長谷川」
思わず引き返すと、洋一がついてきた。その後ろから嵐も続く。
「光!」
少し戻ると、壁に寄り掛かって蹲っている光がいた。真紀が駆け寄ると顔を上げる。
「光、大丈夫?」
「ん……」
笑顔を繕うとしているが、その顔には生気がない。薄暗くても分かるほど、蒼白な顔をしていた。
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