・38 「早くしろよー」 すでに入場口で待機していた嵐が手招きする。 水族館と聞いて微妙な顔をしていたのは誰だっけ、と思ってしまうほど楽しそうな笑顔だった。 「全く、子どもなんだから」 「ふふ」 苦笑する光の横で吹き出す。 「なんか光って嵐くんのお姉さんみたいだよね」 笑いながら言うと更に苦い顔をされた。 「やっぱそう見える?」 「うん。手綱握ってる感じ」 「はは、言えてる」 突然別の声が混ざってきて真紀は振り向いた。そこにはいつもとは違う無邪気な顔で笑う洋一がいた。 「なら、こいつらの手綱握ってんのが俺だな」 「ちょっと洋一、どういう意味よ」 「俺はお前らの保護者代わりだからな」 「って、私を嵐と一緒にしないでよ」 「おいー早くしろってー」 「今行くよ!」 「こら、待ちなさい、洋一!」 楽しそうに笑う洋一に、ちょっと憤慨しながらもやっぱり楽しそうな光を眺めて、真紀は笑いをこぼした。 「もう……。とりあえず行こっか」 「うん!」 苦笑混じりの光に頷いて、真紀は小走りに歩きだした。 [*back][next#] |