・32
「真紀ちゃん学食行こう!」
四限目の数学が終わった途端、嵐が叫ぶように言った。その気迫に驚いて固まっていると、例の如く光が口を挟んだ。
「おあいにく様、今日は中庭で私とお弁当なのー」
「えーそんなのずりーよ! 俺だって真紀ちゃんとご飯食べたい!」
まるで駄々っ子のようにぐずりはじめた嵐に真紀も光も苦笑する。
「じゃ、じゃあさ、学食じゃなくて購買でなんか買って皆で中庭で食べようよ」
苦し紛れに言うと、嵐は目を輝かせて立ち上がった。キラキラとした瞳で、渋い顔をしている光を見つめる。
その姿に、犬の耳と尻尾が見えたのは真紀だけではないと思う。
「……まぁ、真紀がそう言うならいいけど」
光の答えに嵐は大喜び。本当に犬みたいだなぁと思っていた真紀の耳に、光の声が聞こえる。
「ただし、洋一も一緒ね」
「え……」
驚いている真紀と洋一を余所に、嵐は笑顔で了承している。
「いいよな、洋一!」
もはや事後承諾。嵐のキラキラの瞳に、洋一も呆れながらすぐに折れた。
[*back][next#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!