・30
「芳賀くん?」
「ごめ、やっぱお前変わってる」
首を傾げる真紀の隣でまた笑って。
笑われたことに顔から火が出るほど赤くなったが、洋一の新たな一面が見られたことを嬉しく思った。
ひとしきり笑ってから、洋一は作業を再開した。
「ま、適当にやってれば」
「え?」
先生が聞いたら怒りそうな言葉に、真紀が洋一の顔を見る。洋一は真紀のスケッチブックを見ていた。
「悪い意味じゃなくて。ちょうどいい、って意味の適当。好きならさ、どんな風に描いてもいいじゃん」
「……そんなもん?」
「多分」
「……適当だね」
投げ遣りに聞こえなくもない言葉に口を尖らせる。一応成績がかかってるのだから真面目にやるに越したことはないと思う。
そういえば、と真紀はちらりと洋一のスケッチブックを見る。
「芳賀くんは、絵上手いんだね」
真紀の絵が隣にあるから、というわけでもなく、洋一の絵はほぼ正確に模写されていた。
「これも適当なの?」
冗談混じりに言うと、洋一は苦笑しながら答えた。
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