・26
「なんでこうなるんだ」
「それはこっちの台詞」
取り残された教室で、文句ばかりの嵐にノートを見せながら洋一は言った。
自分だって学食に行かないと昼飯にありつけないというのに、どうして嵐の尻拭いをしなければいけないのか。
「俺は真紀ちゃんに借りたかったのに」
「だからだろ?」
「は?」
嵐は眉を寄せながら顔を上げた。
「お前が下心丸出しにして長谷川にねだるから、光が口出しすんだろうが」
「えっ……なな、なっ」
ため息をつきながら言うと、嵐は急に顔を赤らめはじめた。
「……なんだよ?」
「お前、気付いてたの?」
「何が」
「お、俺が真紀ちゃんを、その……」
それ以上は言えない、と言うように嵐は顔を突っ伏した。それを見た洋一は嵐が何を言いたいかが分かって逆に驚いた。
「お前、今更だろ、そんなの」
「そっ、そそそうなのかっ!?」
更に慌てる嵐に対し、洋一は口元を引きつらせながら呆れた。
四月からの嵐を見ていれば、嵐が真紀に好意を抱いていることは一目瞭然だ。それをまさか隠しているつもりだとは思わなかった。
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