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「なんでこうなるんだ」

「それはこっちの台詞」


 取り残された教室で、文句ばかりの嵐にノートを見せながら洋一は言った。

 自分だって学食に行かないと昼飯にありつけないというのに、どうして嵐の尻拭いをしなければいけないのか。


「俺は真紀ちゃんに借りたかったのに」

「だからだろ?」

「は?」


 嵐は眉を寄せながら顔を上げた。


「お前が下心丸出しにして長谷川にねだるから、光が口出しすんだろうが」

「えっ……なな、なっ」


 ため息をつきながら言うと、嵐は急に顔を赤らめはじめた。


「……なんだよ?」

「お前、気付いてたの?」

「何が」

「お、俺が真紀ちゃんを、その……」


 それ以上は言えない、と言うように嵐は顔を突っ伏した。それを見た洋一は嵐が何を言いたいかが分かって逆に驚いた。


「お前、今更だろ、そんなの」

「そっ、そそそうなのかっ!?」


 更に慌てる嵐に対し、洋一は口元を引きつらせながら呆れた。

 四月からの嵐を見ていれば、嵐が真紀に好意を抱いていることは一目瞭然だ。それをまさか隠しているつもりだとは思わなかった。

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