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「アユカちゃーん! おはよー!」
教室中どころか学校中にも響き渡りそうな声に歩香が眉をひそめる。
声の主はずかずかと教室に入ってくると、窓からベランダを覗きこんだ。
「あ、いたいた」
「…………」
満面の笑みの男子生徒を歩香は忌々しそうな目で見る。好物の焼きそばパンを握りつぶしかねない手のわななきを友達は見逃さなかった。
「アユカちゃん、おはよ」
だが、そんな歩香に気が付かないのか男子生徒はなおも笑顔で話し掛ける。
構ってられるか、そう思い食事を再開すると、男子生徒は窓からベランダに出てきた。
「相変わらずクールだねー。でもそんなアユカちゃんも好きだよー」
この男、平井雪都。歩香より二つ年上で、高校三年。そのくせ歩香よりやたら子どもっぽい。性格もそうだが、癖のある黒髪や、ころっとした顔が余計幼さを際立たせる。
あることがきっかけで、歩香のことが気に入ったらしく、毎日付きまとってくる。もちろん歩香は眼中にないのだが。
「…………」
「先輩、いい加減にしてくれませんかぁ?」
「…………」
「私の平穏な昼休みを壊さないでぇ!」
「……綾、何言ってるの?」
無言でいた歩香の隣で、友達の島崎綾が雪都に向かって言っているのを見て尋ねた。
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