11
「そうなんだ? あ、日直? お疲れ」
机の上に置いてあった日誌を見て言う。特に反応も示さないでいると、手に取って眺めはじめた。
「ちょっと」
「へーアユカちゃんて可愛い字書くんだね」
「……返してください」
手を出して言うと、雪都はその手を握った。
「……は?」
あまりに突然のことに目を点にしていると、またいつもの笑顔。
「俺も一緒に職員室行ってあげる」
なんだそれは。
言おうと思ったが、あまりに意味が分からなすぎて声も出なかった。
雪都の手を振り払い、手をつなぐことからは逃れられたが、結局一緒に職員室に行くことになってしまった。
それというのも、雪都が日誌を返してくれないからで。歩香は仕方なく雪都のあとについてきた。
大体、昨日あんなことがあったのに、どうしてこうもいつも通りなのかが気になる。それとも、あの程度の拒絶は雪都には関係ないのだろうか。
考えていると、またあの傘が舞うシーンがちらついた。
だめだ。考えるのやめよ。歩香はため息をついた。
[*back][next#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!