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 ノートを覗き込めば、テキストが綺麗に写されていた。雅之くんは字もうまい。

 でも、なんというか綺麗すぎた。字ではなく、全体の印象。ノートには本文だけが整然と並んでいた。


「雅之くん、もしかして古典苦手?」

「…………」


 その沈黙以上に肯定の言葉はない。

 なんか、


「意外。雅之くんなんでもできそうなのに」

「……言われると思いました」


 苦い顔で笑う。

 別に悪気があって言ったわけじゃないんだけど、どうやら雅之くんは気にしてるみたい。

 悪いことしたかな。


「あ、そだ。私が教えてあげようか?」


 その言葉に、きょとんとした視線が向けられた。


「……教えてあげるって、智実さん分かるんですか」

「あら、私文学科なのよ? しかも古典専攻」

「……知りませんでした」


 きょとん顔が驚き顔に変わる。なんかこういう雅之くん見たことなくて新鮮かも。


「ま、そういうことだからここは智実お姉さんに任せなさいな」

「こんなときだけ先輩面ですか」

「こんなことでしか先輩面できないでしょー?」

「それもそうですね」


 ふふ、っと二人で笑い合って、シフトが始まるまでの時間で受験勉強。

 私の教え方なんて全然よくなかったけど、雅之くんの覚えがすごくよくて勉強は随分捗ったようだった。

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