6
ノートを覗き込めば、テキストが綺麗に写されていた。雅之くんは字もうまい。
でも、なんというか綺麗すぎた。字ではなく、全体の印象。ノートには本文だけが整然と並んでいた。
「雅之くん、もしかして古典苦手?」
「…………」
その沈黙以上に肯定の言葉はない。
なんか、
「意外。雅之くんなんでもできそうなのに」
「……言われると思いました」
苦い顔で笑う。
別に悪気があって言ったわけじゃないんだけど、どうやら雅之くんは気にしてるみたい。
悪いことしたかな。
「あ、そだ。私が教えてあげようか?」
その言葉に、きょとんとした視線が向けられた。
「……教えてあげるって、智実さん分かるんですか」
「あら、私文学科なのよ? しかも古典専攻」
「……知りませんでした」
きょとん顔が驚き顔に変わる。なんかこういう雅之くん見たことなくて新鮮かも。
「ま、そういうことだからここは智実お姉さんに任せなさいな」
「こんなときだけ先輩面ですか」
「こんなことでしか先輩面できないでしょー?」
「それもそうですね」
ふふ、っと二人で笑い合って、シフトが始まるまでの時間で受験勉強。
私の教え方なんて全然よくなかったけど、雅之くんの覚えがすごくよくて勉強は随分捗ったようだった。
[*back][next#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!