4 「こんにちはー」 大学の講義を終えてバイト先へ直行する。 前のシフトで入ってる子に軽く挨拶をしてから控え室に行くと、見慣れた後ろ姿が机を前に頭を抱えていた。 てか、学ラン着てる。本当に高校生なんだ……。 雅之くんは私が来たことに気付いていないようで、黙々と机に向かっている。 何をしているのか気になった私は、雅之くんの肩口から机を覗き込んだ。 机に置いてあるのは、教科書とノート、筆箱、そして分厚い古語辞典。ノートに書き写された古文を前に、シャープペンを持つ手が止まっている。 「……お勉強?」 「えっ! あ、わっ! 智実さんいつの間に!?」 小さく呟いたらやたらと大きなリアクションが返ってきた。珍しく雅之くんが慌てている。なんか面白い。 「ついさっき来たとこ」 「な、声かけてくださいよ」 「だってなんか忙しそうだったし」 すると雅之くんは顔をしかめてため息をついた。視線の先は机。 「勉強してたんだ? 偉いねー」 「……まぁ、受験生ですし」 「あ、そっか」 やっぱり私は雅之くんが高校生ということを忘れてしまうらしい。 [*back][next#] |