3 「あー、ほらほら、手が止まってますよ」 「えっ、あ、はいっ」 条件反射で作業を再開する私の横で、急に吹き出す。 「そういうとこ、初々しいですよね、相変わらず」 「……知らないっ」 いつの間にかからかわれタイムに突入している。年下と分かった今はちょっと複雑な気分だ。 私の方が年上なのに。 ……後輩だけど。 坂本雅之くん、バイト先の先輩。 爽やか笑顔の好青年、仕事もできる、背も高い。性格は、少しいじわる。でもやっぱり優しい。 毎日バイトで大変だね、という話から始まり、今度飲みにでも行かないかと誘ったことから分かった事実。 彼は十八歳、高校三年生、つまりは未成年。 後輩の私に敬語で喋っていたのも、夜勤に入れないのも、お酒を飲めないのも、全てそのせいだということが分かった。 ちなみに私は年上だろうとあまり敬語は使わない。仲良くなれそうだな、と思ったら大抵すぐため口になる。 だから雅之くんにもため口で話していたんだけど、まさかこんなどんでん返しがあるとは。 [*back][next#] |