20
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人波を縫って、公園の外に出た。一番近いコンビニに駆け込んで、救急セットを買う。そのままの勢いで公園まで走った。
最低だ。
自分のことばっかり考えて、遥のことを考えてなかった。
慣れない浴衣、慣れない下駄。しかも場所は公園のグラウンド。歩きやすいはずがない。
──最低だ。
自分を罵り、戒めながら、混雑を増す人込みの中を駆けた。
座ってな、と言ったベンチが見えた。だが、そこに遥の姿はない。
一瞬、息の詰まるような感覚。
遥がいない?
目の前が暗くなりそうになったとき、人込みで死角になっていた場所に紺の浴衣が見えた。
遥だ。
安心したのも束の間、遥の肩が小さく揺れているのに気付いた。その様子を遠巻きに見ている通行人。
遥が泣いている。
そのことを目の当たりにして、明るくなりかけた視界が、今度は違う黒さを持つ。
遥
「遥っ!」
まだ遠い遥に、僕の声が届くか分からなかったけど、僕は叫んだ。
涙に濡れた顔が僕を見た。
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