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「遥っ!?」


 後ろから先輩の声が聞こえた。次いで土を蹴るスニーカーの音。
 気付くと、蹲っていた私のすぐ横に先輩が屈んでいた。


「え、あ、大丈夫で……」

「遥足っ、血出てるぞ」


 慌てた先輩の声。見ると、確かに右足の親指と人差し指の間が擦り剥けて血が滲んでいた。


「あ……」


 さっきからちょっと痛いなと思っていたら、さっき躓いた拍子に擦り剥いてしまったようだ。


「でも、これくらい大丈夫ですよ」

「…………」


 これくらいの傷、怪我のうちに入らない。そう思って笑ったのに、先輩は何だか難しい顔をして黙り込んでしまった。

 何か悪いことを言っただろうか。


「あの、せんぱ……」

「遥ちょっと座ってな」


 いつもと違う低い声。抑揚もなく短く言われ、思わず怯んだ。何か言おうとするけれど体が動かない。そうこうしているうちに、先輩は足早に人込みの中に姿を消していってしまった。

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