17
「遥っ!?」
後ろから先輩の声が聞こえた。次いで土を蹴るスニーカーの音。
気付くと、蹲っていた私のすぐ横に先輩が屈んでいた。
「え、あ、大丈夫で……」
「遥足っ、血出てるぞ」
慌てた先輩の声。見ると、確かに右足の親指と人差し指の間が擦り剥けて血が滲んでいた。
「あ……」
さっきからちょっと痛いなと思っていたら、さっき躓いた拍子に擦り剥いてしまったようだ。
「でも、これくらい大丈夫ですよ」
「…………」
これくらいの傷、怪我のうちに入らない。そう思って笑ったのに、先輩は何だか難しい顔をして黙り込んでしまった。
何か悪いことを言っただろうか。
「あの、せんぱ……」
「遥ちょっと座ってな」
いつもと違う低い声。抑揚もなく短く言われ、思わず怯んだ。何か言おうとするけれど体が動かない。そうこうしているうちに、先輩は足早に人込みの中に姿を消していってしまった。
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