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「いえ、大丈夫です」
笑ってそう言ったのに、先輩は私の手を引いてまたベンチに連れてきた。無理矢理私を座らせて、さっき買ったたこ焼きを手渡した。
「これ食べてちょっと休もう」
提案する先輩はいつもの優しい笑顔。こんな優しい人のお荷物になっていることが申し訳なくて、私は俯くように頷いた。
つまようじを刺して、まず先輩に渡す。
だが、
「俺はいいから、遥食べなよ」
さりげなく拒否されてしまった。
たこ焼きでは、ダメだったのだろうか。そういえば先輩の好きな食べ物がなんなのかよく知らない。冬にはチョコが食べたいな、と言っていたけれど。
たこ焼きを見つめたまま黙っていると、先輩が隣に腰掛けた。
チョコ。チョコバナナなら売ってた。
「先輩、私ちょっと買い物行ってきます」
「え?」
「これ、よかったら食べててください」
目を丸くしてる先輩の膝にたこ焼きを乗せて立ち上がる。巾着にうさぎを入れ、いざ出陣、と足早に歩いたところで足に痛みが走った。
急なことでバランスを崩す。手はついて派手に転ぶのは防いだものの、膝元が地面についてしまった。
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