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「先輩、元気出してください」
出店から離れたベンチに腰掛けて、遥は言った。その手には、白くて丸いウサギのぬいぐるみ。隣に座る僕の手には、手足の長いカエルのぬいぐるみ。お腹を押すと、ゲコと鳴く。
結局、夕飯代を差し引いた持ち金をはたいてもウサギは倒れず、最後に一度だけ挑戦した遥が一発でウサギを仕留めた。しかも、残りの二発で隣のカエルまで。
いいとこを見せるつもりがドジを踏み、店のおじさんにも同情の目で見られ。
これが落ち込まずにいられようか。
「先輩が弱らせてくれたから取れたんですって! 私は止めを刺しただけですよ」
あぁ、普段は鈍感な遥が僕を励まそうとしている。それだけで自分の情けなさに涙が出そうだ。
「ありがとう、遥。もういいよ」
「…………」
精一杯の笑顔を向けるも、遥は申し訳なさそうな顔を崩さない。
でも、その優しさが、今はきつい。
「お腹空いたよな? 何食べたい?」
無理に話を打ち切るように言って立ち上がる。遥はまだ少し気にしていたようだったが、僕の笑顔を見て納得したようだった。
そうだ、今日はお祭り。楽しまなきゃ。
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