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***


 待ち合わせは近所のバス停。

 僕の家と遥の家の丁度真ん中くらいにあるバス停で、そこから夏祭りの会場である近所の公園まで歩いて行く予定だ。

 別に公園の入り口で待ち合わせてもいいんだけど、それだと人が多いくて祭りに行く前から気疲れしてしまいそうだから、と僕が提案した。

 それになにより、少しでも長く遥といたいという僕の下心から出た結論でもある。

 疎らに行く人の波に浴衣姿の男女。カラコロと鳴る下駄の音が、遥を待つ僕の胸の音にかぶった。

 空はオレンジから紺に移り変わろうとしている。東の空には、もう星が瞬きはじめている。

 予定の時間より三十分も早く着いてしまった僕は、手持ちぶさたに立ち尽くしていた。


「……先輩?」


 ふと聞きなれた声がして振り向くと、そこには夕闇に似た色の浴衣を着た女の子。

 一瞬、言葉を失う。

 何故って、誰だか分からなかったから。


「すみません、待たせちゃったみたいで……」

「あ、いや」


 言葉がうまく出てこない。もっと言いたいことがあるのに。

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