キセキの秋桜
61
「じゃあね」
「皆さんお気を付けて」
「バイバイ」
「はい、また」
「……。」
あれから数時間。ナミモリーヌに滞在していたキセキ達と空達はいい加減お店を出ないと迷惑になると思ったのか、店を出て直ぐにキセキ達と別れた。
「まだ、ウロウロする?」
「そうですね……後少しだけ」
「そうだね」
「……。」
キセキ達が帰ってから炎真とユニの二人に次如何するか意見(?)を聞いた空は、ユニと手を繋ぎまた歩き出した。炎真も其の少し後ろを着いて行った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「並盛は素敵な所ですね」
「色々な所があるんだね」
「(コクッ)」
「僕、住むなら並盛かな」
「そうですね」
他愛のない会話をしながら炎真、ユニ、空はフラフラと歩いていた。変わらず空は無表情のままだったが。
其れでも炎真とユニはこうしている事が嬉しかった。二人がそう思っていたそんな時だった。
「つーわけ」
「それマジかよ」
「マジだって!」
「?」
「? 空ちゃん?」
二人の男子中学生が話しながら、空達とすれ違った。ただすれ違っただけなのだが、何故か空は歩みを止めて振り向いた。
然し其処には誰も居(お)らず、炎真が声を掛ける迄ずっと見つめていた。誰かを探すかの様に。
「誰かお知り合いでも居たんですか?」
「ツナ君とか?」
「……何でも、ない」
「そうですか?」
「じゃあ、行こっか」
(気の所為、だよね)
一瞬、自分の知り合いが居るのかと思った空だったが、気のせ所為だと思う事にして、そのまままた歩みを進めた。其の後ろ姿を見ている人≠ェ居る事にも気付かないまま。
「今すれ違った女の子……まさかな……」
「? 如何したんだよ? 可愛い女の子でも居たのかよ」
「違ぇよ。ちょっとなー」
「何だよ、勿体ぶりやがって」
「言っとくけど、オレ勿体ぶってねぇからな?」
(気の所為だよな。約束した双子ちゃんの一人なわけねーよなぁ……)
(今何してんだろ……アイツら)
そう思いながら、一人の少年は友人達とその場を去って行った。後々、己の運命を変える事になるかもしれないとも知らずに。
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