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キセキの秋桜
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「……。」

「よく食べるんですね」

「凄い量……」

「んー? そう〜?」




炎真とユニがそう言えば、紫原はモグモグと口を動かしながら答えた。空はあまり興味なさげに何処か遠くを見ていた。

時より炎真とユニの二人を見たりしながら、カップに口をつけていた。

変わらずあまり会話には参加しないが。




「空ちゃんは何か食べないの?」

「……。」

「空さんは今あまり手持ちがないので」

「そう言う事でしたか」

「(モグモグ)」




全員が席に着くと其れは其れで、威圧感があった。だがユニと空はあまり気にしていないのか、平然としていた。

炎真は何処か怯えている様な気もするが。そんな全員を余所に、空は一人違う事を考えていた。



「(……夢に出て来たあの場所、知ってる気がする。何処だろう)」

「空さん、如何しました?」

「……別に。考え事」

「そうですか ?すみません、邪魔してしまって」

「……別に」




キセキの世代達は見ていて驚きを隠せずにいた。イヤ、相席をする時から驚きを隠せずにいた。

ユニに対して、対応がソフトな気がした。黒子もその観察眼をフル活用してもそんな気がしていた。

単にユニが自分達よりも幾つか年下だからか、其の雰囲気が穏やかだからか、空が邪険にする場面を一度も見ていない。自分達はよく邪険にされるしあまり話してはくれないのに、と。

其れでも何時も何処かキセキ達の心の中にあるのは良かったと言う気持ちだった。自分達が何故そう思うのかは、本人達にも分からない。

でも、何時も不思議と思うのは、この子を守りたい、守ってあげたい、と言う心の端っこにある、まだまだ小さな気持ちたった一つ。例え空と綱吉の双子ちゃん達がイタリアンマフィアで有名なボンゴレファミリーで、綱吉がその長、空が其の双子の妹だったとしても、嫌いになる事はキセキ達には如何してか出来なかった。

綱吉の人柄と滲み出る優しさ、心の底から本当に家族である双子の妹の事を心配する兄の顔を見ているからかもしれないが、其の大半を占めるのは、やはり綱吉の優しさだろう。だから、本当にこの双子を「守りたい」と思うのかもしれない。

大切な友人として、何とかしたいと思ってしまうのかもしれない。つい最近迄互いに赤の他人だった筈なのに。




「……。」

「(今、空さんは何を思っているのでしょう)」

「(やっぱり何か大切な事を忘れる気がして、気持ち悪い)」




ボンヤリしながら空はずっと窓の外を見ていた。





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あきゅろす。
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