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「うんうん、だから俺いまちょー寂しいの。今度またナンパ行くかなー」
 バンダナで止めたオレンジ頭を揺らしながら、木瀬は携帯を弄り出した。
 こいつ――木瀬隼人とは、高校に入ってから何となくつるんでいる。ノリは良いし冗談は通じるし、何よりあのチャラい外見で喧嘩はマジ強いから、ツレにするには絶好の相手だ。
 まぁ、だいぶ喧嘩はしなくなったけどな。もうすぐ三年だし、進路の事とか担任がうるせーし。
「柳は進路調査なんて書いたー?」
「未定。俺の未来はいつだって未知の領域だから」
「それじゃダメだろ……テキトーに進学とでも書いとけよ」
「木瀬はなんて?」
「進学。テキトーに」
「なら俺もそうするか」
「そうそう。何事も適度にテキトーに」
 こいつの口癖みたいなものだった。何事も適度にテキトーに、木瀬はいつも本気になったりしない。喧嘩も勉強も、ナンパも……恋も。
「この前の彼女可愛かったのにな。何でフラレたんだよ」
「なに、フラレたの断定? 酷いなー」
「フッたのか」
「当たり前ー。ちょっとね、面倒になって」
 その発言は敵を作るぞ木瀬……。
「それに俺、ホントは――」
「ん?」
 呟いた言葉は小さくて聞き取れなかった。覗き込んだら、木瀬はヘラリと笑って“昼飯食おうよ”とだけ言った。
 パンを取り出した木瀬の左腕の袖から、でかい青アザが見えて違和感を覚える。珍しく喧嘩でヤられたのか?
「アザ作るなんて珍しいな」
「えっ……あー、まあね」
 腕を指差したら木瀬がビクッと震えた。そしてあの、誤魔化すときと同じ苦笑い。何かあるのか、直感的にそう思った。
「柳もさ、そろそろ彼女作らなきゃヤバイぞ? もうちょっとで三年なんだから遊べなくなっちゃうし」
「あー? そうだな……」
「いつまでも童貞君じゃ可哀想だしー」
「余計なお世話だっつーの!」
 む、今のはカチンと来たぞ。チクショー自分は彼女持ってたからって好き勝手言いやがって!
「童貞くらい直ぐに卒業してやんよ」
「へぇ? どうやって」
「……。白河」
「ん?」
 何故、咄嗟に出てきたのが男なんだ、俺! 有り得ないだろ! いくら女が身近にいないからって!
「あれー、やっぱ付き合う気になっちゃった? 可愛かったもんねー、あの白河って子」
「いや、そう言う意味じゃ……」



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