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「何でお前はそんな冷静なんだよ! 普通取り乱すところだろ!」
「いや、そんな珍しくもないし」
 予想外の答えに体が固まる。
「ちょ、待て、取りあえず時間をくれ」
「好きなだけどーぞ」
「……、この学園には、そうやつは多いのか……?」
「今更じゃね? てか、二年も通っといて何でお前が知らねーのか不思議だわ」
 知りたくもねーよそんな情報!
「柳先輩」
「あ?」
 見たら、一年生が泣きそうな目で笑ってて、ちょっと落ち着く。そうか、告白――だよな? の途中か。
「先輩が、男に興味ないのは知ってます」
「なら、何で……」
 何で俺なんかに告白したんだよ。お前なら女どころか、そっち系の男だって簡単に落とせそうな、綺麗な顔してるくせに。
「知って欲しかったんです。俺のこと。俺が、柳先輩を好きなこと……」
「……お前」
「だから気にしないでください! こんな奴もいたなーって、思ってくれたら、それだけで嬉しいですからっ」
 中々に健気なことを言ってくれる。大抵のやつならこれだけで落ちるんじゃないか?
「……ならさ、知り合いなんて言わずに、ダチになればいいんじゃねーの?」
「えっ?」
 意外だと言うように大きな目を更に丸くして、一年生はキョトンとした。
「俺のダチは嫌かよ」
「そ、そんなことないですっ!」
 そんな力一杯言わなくても……。何か、その必死さが可愛いとか思っちまったじゃねーか。不覚にも。
「取りあえずお前、名前は」
「し、白河です。白河アキラ。……あのっ、ホントに良いんですか?」
「まぁ、付き合うのは無理だしな……ダチならまだ……」
「ありがとうございます! じゃあ、俺、これで失礼します。お邪魔してすみませんでした!」
「あ、お、おう」
 挨拶もそこそこに、白河は走り去ってしまった。それまで黙って見ていた木瀬が俺にしがみついたまま、ポツリと言った。
「……いーのか? あんな期待させるようなこと言って」
「期待ってな……ちゃんと断っただろ。第一、俺にそんな趣味はない。白河も知ってたし」
「うんうん、そーでした。柳はノーマルだもんねー」
 俺から離れた木瀬の台詞にハッとする。
「まさか、お前も……なんて言わないよな」
「いやいやノーマルだし。俺彼女いたし」
「……そうだったな。過去形なのが悲しいが」



あきゅろす。
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