1 何処かで見たことあるような気がする少年に、何故か俺が呼び出された。話したことはない、筈だ。名前すら知らない。 教室中の視線が突き刺さる中俺は、その小柄な少年の前に立つ。見上げられた顔は幼くて、女の子みたいな顔をしていた。 いや、女なんて久しく見てないけど。 全寮制の男子校なんてロクなもんじゃなかった。女はいないし、いても掃除のおばちゃんか食堂のおばちゃんか、保健室の既婚のおば――お姉さん、この三択しかない。 せめて美人教師の一人でもいてほしいもんだ。健全な男子高校生に夢の一つも見せてくれないのか、この学園は。 「あ、あの」 「――ん……あ、悪ぃ」 母校への愚痴を連想していたら怯えるような目で見られた。顔が怖いのは生まれつきだコノヤロー。因みに悪態も生まれつき……って事にしておく。 「で、何か用か一年生」 「は、はいっ」 返事をして姿勢を正す。俺の肩くらいしかない身長でピシッとしても、ちょっと小突いたら折れそうだぞ、こいつ。 「……、ここでは話しにくいので、移動しても良いですか……?」 言いにくそうに視線だけでキョロキョロする。確かに昼休みの教室らしく、ギャラリーは掃いて捨てるほどいるけど。 「別に良いだろ、ヤバイ話か? 俺最近は喧嘩とかしてねぇし、恨み買う覚えはないぞ」 「そ、そうじゃなくて!」 「なら何でも良いって……さっさと話して帰れ。俺、昼飯まだなんだよ」 「……っ、はい」 ぎゅっと目を瞑って改めて見上げられた。……でかい目だなーとか思いながら眺めてたら、いきなり後ろから木瀬が抱き付いてきた。 「なになに何の話ー?」 「うっせー、邪魔すん――」 「俺っ、柳先輩が好きです!」 ――は。 突然ハッキリと耳に届いた少年の声に、どう反応したらいいか解らない。 「……。なぁ木瀬、いま、告白みたいな台詞が聞こえたんだが俺の気のせいだよな……?」 「しっかり名指ししてたぞー?」 「だあああっ! そこは嘘でも否定して欲しかった!」 叫ぶ俺に、怯えるように涙目を向けてくる一年生。泣きたいのは此方だチクショー! 何が悲しくて男に告白なんざされにゃならんのだ! 「ハッ、お前まさか女!?」 「ええっ? ちょっ!」 「落ち着けバカ柳」 ブレザーを勢い任せで剥ぎ取ろうとしたら木瀬に殴られた。 ←→ |