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5
 午後の授業はかったるくてやってらんねぇ。しかもあんなことがあったからか昨夜ほとんど眠れていない。五限の教師が来る前に席を立ち、保健室でサボることに決めた。
 木瀬と野崎が窓際で話してるのが見えて、咄嗟に声を掛けようか悩んだが、直後に鳴った予鈴に焦り足早に教室を後にした。
 遠回りになるが教師に見つかるわけにはいかないと、職員室から離れている教師が使わないルートを計算しながら一階に向かい、誰もいないことを軽く確認しながら保健室を開いた。同時に本鈴が鳴る。
 静かだ、誰もいない。
「ラッキー」
 遠慮なく隅のベッドに転がろうと、白い間仕切りカーテンを開いたら意外に先客がいて、やべ、と漏らしてそのまま閉じた。幸いに起こさなかったらしい。俺は隣のベッドに潜り込んだ。
「…………」
 隣の奴起こしたか……?
 目を閉じて数分後、ごそごそと布団の動く音が気になり中々寝付けない。誰だよ、半ばイライラしながらカーテンを静かに捲る。
「……野崎?」
 茶髪のスポーツカットに、人の良さそうなその顔はクラスの野崎だった。ちょうど向かい合わせに寝ていたらしく、軽く気まずい。
「っ、な……お前、柳? 何で」
「俺はサボり」
「たく……相変わらずなんだな」
 呆れたように苦笑する野崎。人柄からか嫌味な感じは微塵もない。
「俺の方が早く教室出たのに何でお前がさきに寝てんだよ」
「お前と違って俺はちゃんと木瀬に伝言頼んで普通のルートで来たからなー」
 からかうように笑われた。俺の考えなんざバレバレと言うことか。
「ま、俺もサボりだけどな」
 続いた野崎の台詞に軽く驚く。珍しいこともあるもんだ。
「どうしたよ?」
「そーゆうお前は? サボりとか言いながら顔色悪いけど」
 う。口ごもったのを見逃さなかった野崎は、更に問い掛けてきた。
「何だ、悩みか? 唯我独尊のお前が悩むんなら相当だろ……」
「うっせぇ! どんな評価だ!」
「はは、そのまんま。……話してみろよ」
「…………」
 野崎は、いいやつだ。それは認める。
 しかしいい奴だからこそ、こんな悩みを打ち明けていいものか躊躇ってしまう。
「……そんな大した事じゃねーよ、気にすんな」
 何とかこの話題を断ち切ろうと何でもないように笑ってカーテンを閉めようとした。その手を、野崎の熱い手が止める。
「昼休み、木瀬と話してた事が関係あんの?」



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