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3
「なんだぁ……?」
 ドアを握ればカチリと音をたてて開く。
 鍵は掛かっていないらしい、俺は遠慮なく敷居を跨いだ。
「――……」
 一番奥の個室から声が聞こえている。気になって更に足を進めると、白河の声がして反射的に部屋に割り込んだ。
「白河!」
「柳先輩……!?」
 目の前に飛び込んできた光景。
 ネクタイの色が俺とも白河とも違う三人の上級生が、白河を囲んでいる。一人は俯せの白河を後ろから押さえていて、重さからか柳眉が歪められていた。
 幸いなのは服を来ていた事くらいか。これで裸だったりしたら、理性がぶっ飛んで盛大に暴れていたかもしれない。
「……なに、してんだ、アンタら」
「に、二年の――柳……か?」
 俺を知っているらしい一人が、白河から距離をとった。
「他の誰に見えんだよ、あぁ?」
「ひっ……」
 少しドスをきかせただけで息を飲んでる。ちっ、雑魚かよ。
「良いから、行けよ。そいつに話があんだよ」
「……くそっ」
 二人が慌てて部屋を飛び出す。
 そんな中、余裕な笑みを浮かべた茶髪の男が、ゆっくりと歩きながらすれ違いざまに呟いた。
「アンタも遊ばれないよう、せいぜい気を付けなよ」
「っ、澤村先輩!」
「……?」
 慌てる白河を一瞥しながら嫌味な笑みを浮かべる最後の奴が出ていくのを確認して、白河に手をかす。
 白河は俯いたまま消えそうな声でありがとうございますと呟いた。
「お願いです。何も……聞かないで下さい」
「けどな……」
「俺なら大丈夫ですっ。元々、俺がどうにかしなくちゃいけない、事なんです」
 微かに唇の色が悪い白河は、真っ白な顔をして笑っていた。
「……解ったよ」
 ため息ついてコツン、と額を小突けば、白河はキョトンと目を丸くした。
「何か、助けが居るなら声掛けろよ。礼なら食堂のAランチで良いから」
「ふふっ、はい!」
 やっといつもの笑みを浮かべた白河にホッとして、部屋を後にした。
「……」
 白河は、柳が退出するのを確認して、耐えるように強く唇を噛み締め袖を握った。
「俺が……どうにかしないと」
 それまでに柳に知られるわけにはいかない。何があっても、どんなことをしてもだ。
「澤村先輩に、口止めしなきゃ――」



あきゅろす。
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