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「はよー、柳」
「……おう。体大丈夫かよ?」
 一瞬、身構えた自分に驚く。
 見ると木瀬はいつもとかわらずヘラリと笑ってる。距離を置かれてもしょうがないことをしたのに。
「俺いつか柳のファンに殺されるかも」
「お前をヤれるのは俺しかいねぇだろ」
「……それ表記おかしいから。言っただろ、お前がそっち行っても俺はダチだって」
 一瞬言葉を切った木瀬がなかなか嬉しいことを言ってくれる。
 すぐにいつものノリで触ろうとしたら、今度は輝かしいばかりの笑顔になった。
「けど次ヤったら殺す」
 洒落になんねぇよ死神サン……。

   ◆ ◆ ◆

 昼休みに木瀬とパンを食べてたら、クラスの奴が“柳に客が来てるぞー”と叫んだ。
 かったるく席を立つと同時に天使の微笑みを浮かべた白河と目が合って、咄嗟に木瀬の後ろに隠れる。
「なになに? どーした?」
「……いや、何故か悪寒が……」
 白河を見たら、相も変わらない笑みを浮かべていて、その手には弁当箱がぶら下がっている。
 気のせいだと己に言い聞かせて、とりあえず廊下に出た。
「な、何の用だよ?」
「柳先輩っ、一緒にお昼しませんか?」
「……いや、やめとく」
「なんで!?」
 ガーン、ショック! って感じの効果音が聞こえそうな声で、白河が抗議してきた。
 確かに今までは白河が昼に来たら付き合ってやってたけど、流石に毎日は……。
「いーじゃん柳、行ってあげなよ」
 後ろから、木瀬が白河を優しく眺めながら言った。
 いつもなら喜ぶ筈なんだが、今日に限って複雑そうな顔をしてる。曖昧に笑ってありがとうございますと言った。
「……なら木瀬も来いよ」
 いつも白河と二人だから、たまには人数増えた方が楽しいんじゃないかと思っただけなのに、白河は眉を寄せてうつ向いて、木瀬は呆れた顔でため息をついた。
 ……何なんだこいつら。俺にも解るリアクションしろよ!
「柳お前、いい加減学習しろ?」
「憐れみの目を向けるな木瀬。すっげー殺したくなる」
「良いんです、木瀬先輩。俺は柳先輩と一緒にいれるだけで幸せですから……っ」
「もー、こんな健気な彼女を泣かせてどーすんの!」
「彼女じゃねぇし!」
 力一杯突っ込んだら、白河がうるっと涙を浮かべた。
 いやいや待て待て、ここで泣くか!? 仮にもお前男だろ!
「っ、やっぱり、俺なんかより木瀬先輩が良いんですか……?」



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