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 しかし当の木瀬は、言いにくそうに視線を泳がせるだけで、それだけで本当の事を話す気がないのを悟ってしまう。
「ヤバイ奴にでも目ぇつけられたか? お前だって、最近は喧嘩控えてただろ」
「……っ」
「何なら俺も一緒に――」
「関係ないだろ!!」
 ……!?
 聞いたこともない木瀬の怒鳴り声に、咄嗟に腕を離していた。木瀬は一瞬しまったと言いたげな顔をしたけど、すぐに無表情になって、袖を戻した。
「悪ぃけど、俺の問題だから」
「…………」
 普段からは想像もつかないような冷たい目をしていた。けれどすぐに視線は反らされ、門をくぐり抜けて行ってしまった。
「……木瀬」
 お前、なに抱えてんだよ……?

   ◆ ◆ ◆

「柳先輩……っ」
 翌朝、不機嫌オーラを醸し出す俺の隣に何時ものごとく白河が並んだ。
 こいつに、俺が怖くないのかって聞いたことがある。そしたらこいつ笑顔で“慣れました”って――二日で慣れるとかどんだけ順応力高いんだ。
「先輩、落ち込んでます?」
「解るか……?」
「一見したら“落ち込んでる”と言うより“激怒してる”って感じです、けど」
「この顔は生まれつきだっつってんだろ」
 でも俺はそんな柳先輩も好きですとか何とか騒ぎ出した白河を無視して、登校してくる生徒を無意識に眺めていた。木瀬は、いない。
「……そう言えば、気になる噂を聞いたんですよ」
「あー?」
 興味無さげに相槌を打ったら、白河が急に真剣な声で耳打ちしてきた。
「木瀬先輩のお母様が再婚したそうなんですが……相手の方が厳しい人らしくて、休みの度に木瀬先輩を呼び出しているそうです」
 意識が白河に集中した。何か聞き返そうとしたら、白河は普段とは違うキリッとした目で微笑んでいて、不覚にもかっこいいとか思ってしまった。
「役に立ちそうですか?」
 と言うかどこで知ったんだ。こんな、俺でも知らない事情を掴めるなんて……。
「そう言えばお前、あの時俺が、その……ハジメテだって良く解ったな」
 やっぱ下手だったとか、行動に表れてたのか? うわ、それかなり情けないぞ……こいつかなり慣れてるっぽかったし……。
「あはは、何言ってるんですか」
 しかし白河は明るく笑って。
「好きな人の事は、何でも知りたいに決まってるじゃないですかっ」
「…………」



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