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3
「何だよその上から目線!」
「あ、木瀬先輩」
 木瀬を見て何か思い出したのか、白河はポケットから手紙を取り出し、両手で差し出した。なんか……これって……。
「ラブレター?」
 木瀬が俺の考えをそっくりそのまま言葉にした。けれど当の白河は、ブンブンと手を振って必死に否定する。
「ち、違いますっ!」
「あーだよねー」
「俺じゃなくて、クラスの奴のですっ!」
 違う、聞きたかったのはそこじゃない。
「ラブレターなんだー。へぇー」
 驚くと言うよりは珍しいものを発見したみたいに楽しそうな木瀬。受け取って、その場でびりびり破いていく。
「ここで読むのかよ!?」
「だって“今日の放課後、体育館に……”なんて内容だったらどうするよ? もう放課後なのに」
 そう言うもんか? しかもそう書いてあったとして、絶対行かないくせに。
「なになに……木瀬先輩へ、僕は――」
「朗読すんなバカ!」
「えー、だって気にならない?」
 くすくす笑いながらなんつー惨いことを……まぁ、木瀬はこんなやつだ。
 誰からの好意も本気で受け取らない。気が向いたら答えてあげる、その程度のものらしい。
「ん?」
 手紙を握ってる左手の甲に、紫っぽい傷痕を見付けた。この間の腕といいこいつが怪我するのは珍しい。しかもそれ切り傷じゃないか!?
「なあ、その左手の傷――」
「え? あっ、」
 木瀬の顔色が変わるのを見逃さない。……何だ、何かあるのか。
「……何でもない。ちょいドジっただけ」
「新しいな、それ」
「昨日休みだったから実家帰ってさ、店手伝ったんだよ」
「……そうか」
 良くわかった。こいつが話したくないと言うことが。
「白河、またな」
「あ、はいっ」
 俺は白河に軽く声を掛けて、少しずつ距離を置いていた木瀬の腕を引っ張った。もちろん左の腕を思いっきり。
「いったたた! 痛いって柳ー」
「良いから来い」
 良く解ってないらしい白河に目もくれず、そのまま校門まで歩く。門のそばのでっかい何かの木の下で木瀬を止めて、シャツの袖を捲った。
「ちょっ、」
「……何だよ、このアザ」
 慌てたのが解ったけど遠慮はしない。木瀬の左腕には殴られたみたいな青アザがびっしり付けられていた。
 喧嘩でこいつが一方的にヤられるなんてのはまず考えられない。何か事情があるはず。



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