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 知らなかった。男子校でも“黄色い声援”ってのが存在するなんて。
「おーおー、人気者ですねぇ柳くんは」
 昼休みにダチと遊びでバスケして、ダンクを決めただけなのに何故ギャラリーが声援を。この間まではいなかった筈。
「いや、木瀬も呼ばれてるだろ……」
 よくよく聞いてみれば、木瀬の方が名前を呼ばれてる気がしないでもない。
「今まではお前がノーマルだからって、けっこう遠慮してたみたいだけどな」
「? 何で急に」
「白河と噂になってるからだろ」
 ……マジで!?
「――あ、柳後ろ」
 木瀬の何気無い一言に振り向いたら、ボールが見事後頭部にヒット。
 チクショー誰だよ! 今のタイミング絶妙すぎるだろ!
「遅かったか」
「早く言え……っ」
 怒りに任せて木瀬にパスしたら、軽く口笛を吹きながら軽やかに走り出す。敵チームが慌てて追い掛け始めた。
 はは、無理無理。アイツを止められる奴なんてそうそういないって。
「ラッキー、がら空きじゃん」
 とか言いながらシュートを決めた木瀬に、またもや黄色い声援が沸き起こる。やっぱ俺なんかより多い。
 しかし木瀬は動じた風もなく手を振り返して見せた。
「サービス精神旺盛すぎるだろ」
 何が悲しくて男に愛想振り撒かなきゃならないんだ。不毛すぎる。
「何事も楽しまなきゃ損だって」
「……楽しいか、それ」
「うーん……あんまり」
 いくらギャラリーに聞こえない距離だからってそんな爽やかに笑いながら言わなくても。相変わらず男には容赦ないな、女には甘い癖に。
「そろそろ昼休みも終わるし、戻る?」
 言いながら木瀬はブレザーの上着を羽織る。すっかり秋と言えど運動したあとはやっぱ暑いから、俺は着ないけど。
「暑くねーの?」
「……あー、俺冷え性だからさ」
 そう言えば木瀬はカッターシャツの袖も一人だけ捲ってなかった。そんなに寒がりだったっけ。
 て言うか普通にバスケしてるから忘れてたけど、こいつ腕にアザがあったよな。
「腕、もう平気なのか」
「ん、まーね。……それより、次の数学川崎だぞー。急いだ方がよくない?」
 その言葉を合図に周りの奴等も小走りになる。俺も取りあえず軽く走ったけど、木瀬は逃げるように先に教室に向かった。

   ◆ ◆ ◆

 放課後、すっかり恒例になりつつある“迎え”が来た。



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