1 (重い……) 金縛りにでもあったかのような体の重さで目が覚めた。視界は暗い、まだ夜明け前なのかもしれない。 「んー……む」 「あ?」 体の上で何かが動いた。俺は取りあえず体を上向かせようと、覚醒したばかりの体を叱咤して寝返りを打つ。 「うみゃ?」 「……すずかよ」 ぼーっと眠気まなこなすずが、丸めた指先で頭を掻く。仕草は完全に猫のままだ。 「にー。おはようございます、春馬様」 「……おはよう。俺の上は寝心地がよかったか、すず」 「み? ……ッあぁ!?」 思い出したのか、赤くなったり青くなったりしながら、すずはバタバタと騒いだ。 「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、僕、何てことを!」 「いや、大丈夫だから落ち着け」 しまった、苛めるつもりはなかったのに結果苛めてるみたいだ。 「おっはよーご主人様! すず!」 「うわっ!?」 不意打ちのアタックに再び雑魚寝状態。見ると、らぶが満面の笑みで飛び付いてきていた。 「二人ともなかなか起きないから、心配したぞー!」 「ご、ごめんね」 「つーかまだ六時じゃねーか……」 十分早い。なのにこのテンションなのはやっぱ犬だからなんだろうか。 「なつきが朝飯つくってるぞ!」 「ご飯は夏希様が作ってくれているんですね」 「俺、作れねぇし。うちは親もいないから」 欠伸をしながら取りあえず起きる。布団をたたみながら、ふとこいつらの親が気になった。 (まだ、ガキだよな……) 話だと“飼い主”はいても“親”の存在は出てこない。 「僕達、両親の顔も存在も知らないんです」 心を読まれたのかと思って振り返ったら、すずが申し訳なさそうに微笑んでいた。 「こんな体だから、両親が普通の動物なのか、いるのかどうかも解らないんですけど……」 「すず」 らぶが慰めるみたいにすずの手を握った。 「気づいたときには、すでに最初の“ご主人様”の元にいました。だから解らないけど、でも――ごめんなさいっ」 「……何で謝罪?」 話の流れがおかしい気がして聞き返したら、すずは顔を上げずに言った。 「踏み入ったことを話させてしまいました……ごめんなさい」 「なんだ、そんなこと」 「春馬様……」 「兄ちゃん! 朝ごはん出来たよー!」 呼ぶ声に返事をして二匹を連れていく。台所にはいつもとおなじ朝食が並んでいた。 ←→ |