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(重い……)
 金縛りにでもあったかのような体の重さで目が覚めた。視界は暗い、まだ夜明け前なのかもしれない。
「んー……む」
「あ?」
 体の上で何かが動いた。俺は取りあえず体を上向かせようと、覚醒したばかりの体を叱咤して寝返りを打つ。
「うみゃ?」
「……すずかよ」
 ぼーっと眠気まなこなすずが、丸めた指先で頭を掻く。仕草は完全に猫のままだ。
「にー。おはようございます、春馬様」
「……おはよう。俺の上は寝心地がよかったか、すず」
「み? ……ッあぁ!?」
 思い出したのか、赤くなったり青くなったりしながら、すずはバタバタと騒いだ。
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、僕、何てことを!」
「いや、大丈夫だから落ち着け」
 しまった、苛めるつもりはなかったのに結果苛めてるみたいだ。
「おっはよーご主人様! すず!」
「うわっ!?」
 不意打ちのアタックに再び雑魚寝状態。見ると、らぶが満面の笑みで飛び付いてきていた。
「二人ともなかなか起きないから、心配したぞー!」
「ご、ごめんね」
「つーかまだ六時じゃねーか……」
 十分早い。なのにこのテンションなのはやっぱ犬だからなんだろうか。
「なつきが朝飯つくってるぞ!」
「ご飯は夏希様が作ってくれているんですね」
「俺、作れねぇし。うちは親もいないから」
 欠伸をしながら取りあえず起きる。布団をたたみながら、ふとこいつらの親が気になった。
(まだ、ガキだよな……)
 話だと“飼い主”はいても“親”の存在は出てこない。
「僕達、両親の顔も存在も知らないんです」
 心を読まれたのかと思って振り返ったら、すずが申し訳なさそうに微笑んでいた。
「こんな体だから、両親が普通の動物なのか、いるのかどうかも解らないんですけど……」
「すず」
 らぶが慰めるみたいにすずの手を握った。
「気づいたときには、すでに最初の“ご主人様”の元にいました。だから解らないけど、でも――ごめんなさいっ」
「……何で謝罪?」
 話の流れがおかしい気がして聞き返したら、すずは顔を上げずに言った。
「踏み入ったことを話させてしまいました……ごめんなさい」
「なんだ、そんなこと」
「春馬様……」
「兄ちゃん! 朝ごはん出来たよー!」
 呼ぶ声に返事をして二匹を連れていく。台所にはいつもとおなじ朝食が並んでいた。



あきゅろす。
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