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らぶの声がする。
懐かしい声だ、もう朝か……。
――はるま、起きて、目を覚まして
わかったわかった、今起きるから、そんな泣きそうな声出すな。
――なんで、なんで来たんだよぉ……!
なんでってお前、それは――
「――! らぶ!」
ハッとして、一気に覚醒する。目が空いたと同時に、らぶの泣き顔と白い天井が見えた。
「無事、だったんだな……」
「なに、言って……はるまが無事じゃ、ない……っ」
泣きじゃくるらぶを寝たまま抱き寄せる。体が重い、まだ起きれそうにない。
「……お前が無事でよかった」
「うぅーっ」
ふるふると首を振るらぶ。こんな姿を見るのは初めてだ。
この部屋で、どんな目にあっていたのかと思うと、怒りで腕に力がこもる。
「はるま、大変だ、どうしよう……すずがあいつらに捕まった……!」
「あいつら?」
首だけ起こして聞くと、俺の胸に顔を埋めたまま、らぶが泣いた。
「白衣の、やつら。俺たちをつくった、人間たち」
「……!!」
すずを連れて行った白衣を思い出す。
らぶとすずを作った、人間たち。その言葉にゾッとした。
北条無月は、いったいこの屋敷で何をしてるんだ――?
◆ ◆ ◆
薄暗い部屋だった。
無数のモニターに映し出された屋敷内の映像を睨みながら、北条夏希は舌打ちした。
「無月様、侵入者の一人を確保いたしました」
「……そうか」
「兄の方と思われますが、いかがいたしましょう?」
「捨て置け。僕が捕まえたいのは、あの生意気な弟の方だ……!!」
バリン、と音を立てて崩れるワイングラスを、豪華な手袋をはめたその手で叩き割る。
グシャ、ガシャ、と耳障りなその音に、執事が一歩後ろに下がる。
「早く見つけ出せ! 僕の命令が聞けないのか!」
「はっ――!」
ヒステリックに叫ぶ主人に敬礼し、男は部屋をあとにした。
「どいつこいつも、どうして僕を……!」
青年は眉根を寄せて、粉々になったガラスを払い飛ばした。
◆ ◆ ◆
「外は騒がしいわね、まだ動かないほうがいい」
「あのー……」
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