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 とりあえず確かめてきますと言い残して、すずが素早くドアに近づく。
 鍵はかかっておらず、すずがそっと中を覗いた。
 しばらくそうして、俺たちを手招く。
「行こう、兄ちゃん」
「ああ――」
 待ってろ、らぶ。
 俺たちが必ず連れ戻してやるからな!

   ◆ ◆ ◆

 北条の家は、外で見るよりも立派な屋敷だった。
「殺意沸く」
「俺も」
「ふ、ふたりとも、怖いです」
 兄弟の形相に怯えながらも、すずは細心の注意で廊下を進んでいった。
 屋敷の中には微かにクラシックが流れている。けれど住人や使用人の気配はまったくしなかった。
(すずの言うとおり、本当に昼飯作ってるだけなのか……?)
 そんな不安もありながら、それでも俺たちは先へと進んだ。
「春馬様がらぶを見たのは、格子のある窓の部屋でしたよね」
「ああ、そうだ」
 思い出してもゾッとする。あんな場所に、らぶを置いておけるわけがない。
「ひとつ、心当たりがあります。ただ、その部屋は北条無月様の部屋のすぐそばです。注意しなければ」
 あの日、誰かに腕を引かれていたらぶを思い出す。あれはやっぱり、北条なのか――。
「二人とも、待って」
 小さなその声に足が止まる。
 見るとその先は階段だった。
「二階は食堂があります、一気に三階まであがります」
 俺も夏希も短く頷いて、すずが動くのを合図に一気に駆け上がった。
 ここを上がればらぶがいる――その一心で。
 しかしそれは失敗に終わった。
「きゃああ! 誰!?」
 メイドの一人が俺たちに気づいて声を上げた。
 それからの展開は早かった。すずは白衣を着た男に連れて行かれて、俺と夏希は、執事服の男たちが抑えにかかってきた。
「夏希!!」
 視界に捉えた、夏希の背後にいた男を突き飛ばす。同時に夏希の体が使用人たちからそれた。
「行け!」
「――わかった!」
 乱闘が後ろから聞こえたが、それを振り切って夏希は走った。小さな体が有利になってか、どうにか逃げ切ることができた。
「……お前ら、すずをどこにやった!」
「はて」
 首をひねる執事服の男に、もう一度怒鳴る。



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