1 「“拾ってください”の犬と猫って、一緒の箱に入れても良いのかな……」 夕ご飯のおかずを買いに来た帰り道、弟がふとそんなことを言った。俺も弟の視線を辿ると、夕陽に染まる河原で、小さな生き物がふたつ、並んで震えていた。 「酷いな、誰が捨てたんだろう」 「兄ちゃん……」 「取りあえず連れて帰るか?」 駆け寄ると二匹は寄り添うように温め合っている。犬と猫だけど仲が良いらしい。これなら二匹とも連れて帰っても問題ない。 「うん!」 弟は嬉しそうに頷いた。 ◆ ◆ ◆ 元気がない二匹は連れて帰っても寄り添うようにして離れない。知らない場所にいきなり連れてこられたんだ、無理もないけど。 「ほら、大丈夫だぞ」 弟が犬に手を伸ばした。 「わんっ!」 ビクッと奮えた仔犬が、弟の手から逃げるように身を引く。それでも弟はじりじりと近付いていった。 「あんまり苛めるなよ」 「苛めてないよーだ。ほらおいで、らぶ」 「らぶ……。名前か?」 「ラブラドールだろこいつ。だから、らぶ!」 満面の笑みで犬を呼ぶ弟に、らぶは心を開いたのか、おずおずと近付いていった。差し出された指先をペロリと嘗める。弟は嬉しそうにはにかんで、らぶに抱き付いた。 「らぶー!」 「きゃんっ!」 突然の包容に逃げようともがくらぶに同情する。弟は犬が大好きだもんな、まぁしょうがない。 「さて……」 問題はこっちの方だ。丸まって見上げてくる真っ白な仔猫。警戒してるみたいに一歩も近付いてこないし、逃げもしない。 「猫ねぇ……」 弟みたいに動物大好き! って訳じゃねぇし、どうしたもんかな。頭を抱えてたら、ふとタンスの中にあるでっかい鈴を思い出した。 「丸いの好きそうなイメージあるしな、猫」 勝手な偏見かもしれないが、うちには毛糸なんてものはない。あれで我慢してもらおう。 「お、あったあった」 でっかいのと、小さいのもある。小さい方は首にでも付けるか、可愛いし。 「にぃ……」 鈴に興味を示したのか、猫が立ち上がってそろそろと近付いてきていた。目が合うとビクッと震えて立ち止まる。 「そんなに警戒すんなよ……ほら」 コロコロ、鈴が猫の前で止まった。くん、と匂いを嗅いだあと前足で転がす。凛々と涼しげな音が響いた。 ←→ |