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「チッ……ご丁寧に監視カメラまでつけやがって」
アレがあるとあまり近づけない。遠目から、庭らしきところを覗いてみると誰かいるのか、影が動いた。
「……んだ、メイドか」
庭で洗濯物を干している。
長居して不審がられたら厄介だ。次は裏の方に回り、また中を覗いてみた。
部屋の窓が並んでいる。一室だけカーテンが開けられているのが気になって見ていたら、らぶが顔を出した。
「らっ……!」
叫びそうになるのをぐっと堪える。らぶだ、よかった。
一階のその部屋の回りだけ鉄格子がされている。“何かを閉じ込めるための”部屋なのかもしれない。
そう思うとぞっとした。
俺は小石を塀の中にある樹に投げて葉を落としてみた。らぶが気付いてこちらを見る。
「――――」
「……らぶ?」
こちらを見ているはずのらぶの目には、虚空を見るかののように何の感情もなかった。
前にすずが話していた事を思い出す。初めて会ったとき、らぶは冷たい目をしていた……それは、どんなときだった?
「……! はるま」
ハッとしたらぶがダメダメと手を小さく振る。……いつものらふだ。ホッとした。 俺は指先を自分に向けて、次にらぶの方を指差した。
“俺は、そこに行く”
らぶを助ける。そうはっきりと伝えたかった。
――らぶが北条無月に連れていかれた日、何で俺は無理矢理にでも連れて帰らなかったのかと何度も何度も後悔した。もうあんな思いはしたくない。
遠目でも解るくらいらぶが泣きそうな顔をする。それから首もとを指差して、何かを揺らすようなジェスチャーをした。
すずの首につけてる飾りだ。
大丈夫だと指で丸を作ると、らぶは安心したように笑ったが――その時、何かに引っ張られるようにその場からいなくなった。
「っ……何で、そこまでしてあんな奴のところにいるんだよ……」
すずを守るため?
俺にはその他の理由もあるように思えた。何かは、解らないけれど。
◆ ◆ ◆
今日の話をすると夏希とすずは少しだけ安心したようだった。けれどすぐにまたつらそうな顔をする。
「どうしたらいいのかな」
一日でも、本心では一秒でも早く連れ出したいが、相手が悪い上にいい方法も浮かばない。
難しい顔で思案する兄弟を交互に見て、すずが思い切って口を開いた。
「……あ、あのっ」
「ん? なに?」
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