2 「っ……委員長くん?」 いつも巻き添え食らってる、月城だった。 「校内禁煙」 それだけ言うと、俺の吸い始めたばかりのタバコを躊躇なく握りつぶす。 「……熱くねーの?」 「つい……」 つい、で握れるもんかね、タバコ。 興味本意で月城を引き留めたら、昼休み終わるまでならと付き合ってくれた。 いい暇潰しが見つかったかもしれない。 「親父が、すっげータバコ依存してて」 昔の話っすけど、と笑った。 昼の屋上には、まだまばらに生徒が残っていた。 そのほとんどが俺たちを見てる。 「目立ってるねぇ」 「誰のせいですか。あんたたち恐れられてる自覚はないのか」 「あはは、あんまりないなぁ」 笑うと、月城は苦笑した。 「ま、でも、タバコはやめようかな」 「え?」 「依存はしたくないんだよねぇ」 チャラけて言うと、月城はそうか、と複雑そうに呟いた。 「あんたはあまり怖くないって判った」 「それは光栄。ちなみにリョウは?」 「こわい」 「即答だね」 昼休み終わりの予鈴がなった。 その日は、そこで別れた。 ◆ ◆ ◆ 「副会長」 翌朝、廊下で委員長くんに声をかけられた。 この間までは、考えられなかった光景。 「あ、おはー。どうしたの」 「あの……マジで、やめたんすか」 信じられないのか、疑いの眼で聞いてくる。 「あれから一本も吸ってませんよ?」 「タバコは」 「リョウにやった」 両手をヒラヒラとふると、月城は複雑そうな顔で考え込んだ。 「あ、あの、もし俺が言ったことが関係してるなら、忘れてくれても――」 「あー、まぁ多少はあるけど」 タバコ依存を見てるからか、俺が本気でやめられると思ってないらしい。 まったく、心外だなぁ。 「俺が決めたことだからさ、気にしなくていーよ」 「助けて月城ー!!」 言い終わるかどうかぐらいのタイミングで、白雪が飢えた狼を背に飛び込んできた。 ←→ |