3 「兄の方の花咲リョウ先輩はキレ易くて有名、絶対怒らせるなよ。弟の花咲ショウ先輩は一見チャラいけど、見た目で判断するな。喧嘩は兄より強いって噂だ」 「そうなんだ……凄い人達なんだね」 ほえーと感心する白雪からは脅えとか怯みなんかは見られない。 「でも、いい人達だよね。転入したての俺を気遣って、放課後生徒会室に来いって言ってくれたし」 そう言えばそんな事言われてたなと思い出す。 そして再び、南無。 「え、な、何? 何で拝んでるの月城」 「大丈夫だ。俺は助けてやれないけど、これも運命だと思って……」 「え、え?」 一人訳の解っていない白雪があたふたと慌てる。 まあ、これも可愛く生まれた上に男子校に来てしまった者の運命だ。たぶん。 ◆ ◆ ◆ 白雪は困り果てている。 それもそうだ、この学園の生徒会の噂を一通り話したのだから、生徒会に対する印象は最悪な筈だ。 放課後、捨てられた子猫の様な目で生徒会室へ案内してと言われて断れないのも、俺の運命なのかな。 はは、今生徒会室前でちょい後悔してます。 「えっと、ここが生徒会室な。じゃ、健闘を祈る」 早々に立ち去りたい俺は敬礼して身を引くも、それより早く白雪が飛び付いてきた。 「ま、待って、置いて行かないで……!」 「って言っても、俺は呼ばれてないし!」 「うー……っ」 泣きそうな目で俺を見るな! 引き剥がすに剥がせない俺がオロオロしてると、騒ぎを聞き付けた誰かがドアを開けた。副会長だ。 「いらっしゃい、白雪。さ、早く中に入れよ」 「うぅっ……は、い……」 にこにこと微笑まれ引き釣った笑みを返す白雪に心底同情した。 同情したが、救世主になる気はない。 白雪が離れたのを見計らい、俺はダッシュで逃げた。 短い間だったが、俺はお前を忘れないぜ……! ◆ ◆ ◆ 翌朝、その後の白雪を案じて机に添えるための造花を一輪持って来たのだが、不要だったようだ。 机に突っ伏しどんよりオーラを放つ白雪に声を掛ける。 「生きてるか?」 「……うん」 「でも死にかけっぽいな。どうした」 席について何気なく聞いてみる。 生徒会室に呼び出し食らって生きて生還した生徒は珍しい。 見た限り無傷の様だし、実はこの転入生最強なんじゃねーの? なんて好奇心が抑えられない。 しかし続けられた弱々しい声に耳を疑った。 「……告白された……」 「へー、告白され――って告白されたあああ!?」 「こ、声大きいからっ……」 ←→ |