5 「正直、葛藤もあった。白雪のことは嫌いじゃないし、いい友達になれるかもしれないと思ってた。けど、しょうがないじゃないか、あいつは俺に、違うものを求めていたんだから」 後悔とも、懺悔ともとれる表情で、月城は枯葉を握りつぶした。 グシャ、といい音がした。 「そっか……」 葉っぱの山に木の枝を突き刺して、焼きたての芋を差し出す。 正直なんて言ったらいいのか判らなかったけど、月城が頑張ってたのは判った。 「頑張ったな」 いつもより小さく見える背中を、ぽんぽんと叩く。 芋を受けとた月城が目をこすって、焼きたてのそれにかぶりついた。 「あっつ!!」 「あーあー何やってんのもー」 違う意味で涙目になる月城が、笑う俺にむっとして手を伸ばしてきた。 お、俺に喧嘩で勝てると思ってるのかね、この優等生は。 軽く流して遊んでやろうかと思ってたら、俺の胸元を掴んだ腕はそのまま、月城が俺の目の前に飛び込んできた。 一瞬だけ熱く震える唇が、左の頬に触れた。 「…………え」 「――こういうこと」 昨日の言葉の続きだとでも言うように、月城が目の前で断言する。 リョウを珍しく本気にさせた白雪、その白雪の想い人の月城。 その月城が今キスをした相手は――俺? 耳元でグシャグシャと、壊れる音がする。 俺が地面に倒されたからだった。 「副会長、俺……」 どうしよう、俺――もしかして。 一番壊しちゃいけないものを壊したかもしれない。 ハロー、俺の壊れ始めた日常。 next ← |