小説 1 人間は全てのことを覚えている。 この世に生を受けた頃から。 ただあまりにも記憶の量が多すぎて、表に出ているのはほんの一部。他の記憶は外に出るチャンスを今か今かと待ち続けているのだ。ちょっとしたきっかけを逃すまいと。 しかし封印された記憶もあるわけで。 思い出したくない、と人が本能的に思っている記憶は、その人によって記憶の底に沈められている。どんなに出ようとしても枷は外せない。 その枷が外れてしまったら、人は壊れてしまうだろう。 枷は外すもの? 外されるもの? 向き合う覚悟があるのなら外せ。誰かに自分を壊されてしまう前に。 next [戻る] |