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小説
4


その家が見えなくなるまで、2人は無言で歩き続けた。見えなくなると同時に光悦は立ち止まる。それに気づいたコキアは光悦から3メートルほどのところで立ち止まり振り返った。どうしたのよ、とコキアが声をかけると、光悦は少し考える素振りを見せた後口を開いた。


「....コキアはなんでそんなに普通でいられるんじゃ?気づいてたじゃろ?」

「....じゃあ逆に聞くけど、あんたはなんであんなに突っかかってたのよ。分かってたことじゃない、話なんて何一つ聞けないこと....」


体ごと光悦の方へ向け、2人は向かい合う形になる。コキアは目線を外すことなく光悦を見つめた。二人の間を冷たい風が吹き抜ける。風に乗って闘技場から歓声が聞こえてきた。しかし聞こえてくる歓声とは違い、2人の周りは冷めきっていた。

しばらくして、光悦が重い口を開いた。


「....あの人、一度もうちのこと見んかった。眼に光がなくて、死んだようじゃった。うち、怖かったんじゃ....だって....あれじゃ記憶を失ったというより....まるで....」








「『魂を失ったみたい』?」


無言で頷く光悦。その様子を見て、コキアは深いため息をついた。そしてそのまま、前を向いて歩き出す。




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