[


「―――――さて、着任式は終わりだ。皆、仕事に戻ってもいいぞ」


蘭が口を開こうとした瞬間。
まるで遮るようにリボーンは言葉を紡いだ。
そのせいで、蘭は口を噤むしか仕方がなかった。


「勿論、お前らは残れよ。まだ説明があるからな。特に、蘭」


不敵な笑みを口元に描きながら、リボーンは蘭に言った。

先程の恐怖とはまた違う恐怖が蘭を襲ったが、背筋を伸ばし、「はい!」と元気よく返した。

その返事に概ね満足したリボーンはさりげなく隣にいた風に視線を移した。
風は未だ蘭の様子を注意深く見るように、蘭から目を離さない。

全く、心配性な奴だ。

それが風のいいところでもあるのだが、今のこの状況はどう見たって限度を越えている。
リボーンはせせら笑うようにフッ、と笑い、視線を外した。

他の者も同じことを思っていたのだろうか。
リボーンと同じように彼らを一瞥し、扉へと向かう者が格段に多かった。


「じゃあ、ラルにも知らせておくぜ、コラ」


ラストが出て行く間際、コロネロは気がついたふうに言い、颯爽と出て行った。
蘭の「ありがとうございます」の言葉も聞かずに。


「……行ってしまわれました…」


パタン、と閉められた扉の音の後、少し残念そうに紡がれた蘭の声が部屋に反響する。


「気にすんな。いつものことだ」


多少呆れたふうにリボーンはコロネロが去って行った扉を見やる。
他の二人もそのことはわかっているらしく、黙殺していた。


「後でお礼を言わなければなりません。覚えておかなくては…」

「その必要はねぇぞ。むしろ感謝してんのはあいつだからな」

「え?」


キョトン、と首を傾げた蘭にリボーンは「まぁ、これからわかることだ」とあまり深くは語らなかった。


「―――――さて、話を戻すぞ」



(説明会の始まりです)




[*前へ]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!