V


今更ながらお日様がもう沈もうとしているのに気が付いた。
周りの風景が朱いオレンジ色をしている。
お月様もそろそろ姿を見せる時刻だ。

なのに、相変わらず学校から人が出て来る気配はない。


「あなたの飼い主さん、遅いね。」


語りかけるように言ってみる。
けれどそれに対する返事が返って来ないから不審に思って抱えていたお猿さんを覗き込む。


「……寝てる…。」


それはもう、幸せそうに。
さっきまで私に合わせてお喋りをしていたからなぁ。
疲れていたんだろうな。


「あの、ここの学校の生徒ですか?」


寝やすいようにお猿さんを抱え直していたら不意に背後から声を掛けられた。
私相手に声を掛けてきたのかちょっとわからなかったけれど取り敢えず振り向いてみる。


「――――!?」


振り向いてびっくり。
そこに立っていたのはモデルさんのような超美形な男の人がいた。
しかもここはイタリアなのに朱色の中華服を着ている。
ある意味、目立つ人だ。


「あ、えと、この子を…。」


全くこのタイプの顔の人に慣れていないのもあって、どもりながらも腕の中で眠っているお猿さんを見せてみる。
すると目の前の彼はお猿さんに気付くと安心したように微笑んだ。


「あぁ、こんなところにいましたか。あんなに探したのに…どうりでいないわけです。」

「あ、貴方がこの子の飼い主さんですか?」

「はい。どうやらその子がお世話になったようで。」


言いながらお猿さんの頭を撫で、私に微笑みかけてきたではないか。
う、うわぁぁぁぁ!
もう頭は爆発寸前。
もともと男の人と話すのも緊張するタイプなのにこ、こんな綺麗な人とっ…!!
免疫がない分、ダメージ大だ。
顔が熱くなってくるのがわかる。
女の子だったら誰でもこうなると思う。
あぁ、夕日さん。
どうかその赤色でこの真っ赤な顔をカモフラージュしておいてください。


「キ…?…キキィッ!!」

「わ!?」


どうやら覚醒したらしいお猿さんは素早く起き上がって私の掌から離れ、彼に飛び乗った。
それを認めた彼らは互いに顔を見合わせて笑い合った。

わぁ…!!
なんてほほえましい風景なんだろう。
お猿さんの可愛さと中華な彼の綺麗さがマッチしていて私の目はたやすく奪われてしまった。
目の保養って、このことを言っていたのか。
ほんのちょっと知識を噛み締めた瞬間だ。




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あきゅろす。
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