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暫くラルさんとお話をして私は教官室を出た。
ほどよい時間になってしまって昼食を食べていないことに気が付いたからだ。

ラルさんはご飯を分けようと言ってくれたが、絶対ラルさんのほうがこれからしんどくなるのは目に見えているからはっきりと断ってさよならを言って外に出た。

ちょっと歩いてもう一度教官室を振り返ったら誰かが教官室に入って行くのが見えた。

……男の人っぽかったな…。
いや、軍服を着ていたからという理由では相手に失礼か。

あの人も、ラルさんの“お友達”かな。

……今度聞いてみよう。
あわよくば私のお友達も増えるかもしれない。


「今日はもう帰ろう。これ以上ここにいたら怒られてしまう。」


ラルさんは許してくれたけど。
でも、他の先生はわからない。
まだまだ入学したてだから、なるべく目をつけられないようにしなくては。

………と思ったのだが、校舎の四つ角で、あるピンク色をしたモノが落ちているのが目に入ってその考えは頭から瞬時に消え去ってしまった。

遠くからでよく見えないけれど、確かにあれは花びらのよう。
ヒラヒラと滑らかに、落ちて行くあれは…。

気が付いたら身体は勝手に動いていた。

あれは…私の知っているモノのような気がする。
日本人にとって、馴染み深くて、あの魅力的な…。

そう思えてくると自然と進めていた足の速度が速くなった。

まるで、ソレの引力に引き寄せられているように。


(なんだか、呼ばれてる気がするの。)




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あきゅろす。
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