V


瞬間、降って来たラル様の鉄拳。


「きゃうっ!!」


な、何故殴られたのだろう。
あ、ひよこさんが飛んでます。
はじめまして。
…っじゃなくて!


「ら、ラルさん、どうして理由も言わずに殴るんですか!」


流石にこれにはびっくりしすぎて思わず大声で抗議。
だって本当に痛かったんですもの。

でも、顔を上げて見た彼女の顔はどこか悲しげで辛そうで。

寂しそう……。


「あ、ご、ごめんなさい…。」


何故だか私が謝りたくなって気が付いたらそう言っていた。


「……オレのことはいつも通り、その呼び方でいい。」

「え…でも…、」

「お前の教科には関わらないんだ。それぐらいどうってことはないだろう。」


先生がそんなことを言っていいのだろうか。
ここはとても身分に敏感そうなところなのに…。
ラルさんは“教官”で体育会系最高位の教師。
……いいのかな。


「……じゃあ、ラル…さん…。」

「はっきり言え。」

「あ、はい!ラルさん!」


黒いオーラがラルさんの背後に立ち上ったのが見えたので急いで指示通りに言ってみせた。

すると、たちまち力が抜けて行くような表情をしてくれたラルさん。
同時に私も堅苦しい気持ちが解けて、自然と笑いが込み上げてきた。


「ありがとう、ラルさん。今私、とっても幸せです。」


変わってしまった環境に変わらない貴女。
貴女は他の人よりちょっと不器用だから、こんな遠回しなやり方になってしまったんですね。
私の緊張と不安を緩ます為に。

昔からお姉さんのような存在だと思ってたけど、やっぱり今でもそうなんだとちょっと自信を持って言える気がします。


「……そうか。」


すると頭にポンッと置かれたラルさんの手。
また心が暖かくなってくる。


「……うん。でも、これからは頑張れます。ラルさんもいるし、お友達もまだ一人ですけど出来ましたし…。」


不安はだいぶ和らいでくれたから。
大丈夫。頑張れる。


「私、楽しく過ごせそうです!」


新しい学校。
まだ授業は始まっていないけれど、今のこの私の意気込みはどんなことにだって負けない気がする。

私、一人じゃないんです。




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