V


「貴女、ラル様とお知り合いなの?」

「え…?」


振り向くと驚きを隠せないでいるリサさんがいた。
よくよく見たら後ろの人たちも同じ反応をしている。
私が気付いていないだけで実はこの時、周りの人達の注目の的というポジションになっていたのだった。


「あ、はい。私が日本にいた時に彼女、私の家にホームステイをしに来た時に知り合って…」


今では良い友達なんです。となんの躊躇いもなしに言えた。


「あの、それより今“ラル様”って…。」


しかし、気になることがあった。
先程リサさんはラルさんを“様”付けで呼んでいた。
ここでは先生に対する態度は皆そのようにしているのだろうか。
だとしたら私はさっきとてつもない失態を犯したんじゃないだろうか。


「…さっきの会話を聞いてても思っていましたけれど、貴女って本当に何も知らないのですね。」


ゔ…。
全くもってその通り。
苦笑いしか出来ません。


「ラル様はこの学園が誇る有名人ですわ。若くして武術、戦闘技術に富んでおられてしかも“教官”という地位におられる尊いお方。私達からしてみたら雲より高い存在ですわ。」


確かに頭もいいし、よくドジを踏む私を助けてくれる程運動能力も優れておられた。
こうして他の人がラルさんを称賛しているところを聞くなんて初めてで、しかもとてつもなく凄い人だということがわかって何故だか私が照れてしまう。

そんな凄い人と友人になれていたことにほんの少し優越感が湧いてしまう。


「じゃあ、後で一緒にラルさんのところに行きませんか?」

「…貴女、私のさっきの話、聞いておりました?」

「はい。ラルさんがとっても凄い人だということがわかりました。」

「わかってませんわね。さっきも言った通り、あの方は雲より高い存在。私たちのような財閥風情が手を伸ばせる方ではありませんわ。」

「え…?…私、財閥なんて大層な地位ではないんですけど…。」

「……………。」


間。


「…貴女、一体何者ですの?」


かなり訝しそうに聞いて来た辺り、私は今さりげなく爆弾発言をしてしまったことに気がついた。


「え、えっと…。」


どうしよう。
彼女から発せられる黒いオーラが妙に怖い。
これ以上火に油を注ぐようなことはしたくない。


「一年大空組、入れ。」


困っているところでラルさんが号令を掛けて会場内に入るよう促した。

私はこれ幸いと会話を打ち切り列に従って中に入るのだった。




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あきゅろす。
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