また、夜が明ける
2
「これとか似合うんじゃねえの?」
「そうですか?」
「…着て見せて。」
「っ…!!は、い。」
さっきからずっとこんな調子だ。
ひたすら政宗さんが俺に服を選んできて、俺が試着。俺、服とか選んだことないから正直助かるけど…試着は面倒くさい。でも断った時の政宗さんのしゅん、とした顔を見ると。結局着ちゃう。
「政宗さんって、犬みたいですよねー…」
「はあ?」
「あ、あのっ、すみません…っ」
「誰が犬だって?……てめえの前でだけだっての。」
「……っ!!!」
耳元でそう囁かれて、顔が一気に熱くなっていく。きっと今、俺、顔真っ赤だ。なのに政宗さんはずっと俺のことを見つめている。しかもにこやかに。
……恥ずかしい。
それよりも、政宗さんが似合うって言った服全部店員さんに預けてたのが気になる。…まさか、全部購入してる!?
不安になりながら政宗さんをちらちら見ていると。
「心配すんなって。お前が思ってるよりたくさんは買ってねえからさ」
「あ、そうなんですか。良かった…」
「お前絶対気にするだろ、そーゆーの。」
「え…」
どこまで良い人なんだ、この人。
本当に俺と恋人だなんてもったいないなあ。
「えっと、今日はありがとうございました。楽しかった、です」
(というよりも、恥ずかしかった…)
「隆一から感謝されると嬉しいよ。…俺も楽しかった」
きゅん。
なんか本当にデートみたいだったなあ。申し訳なさすぎて、政宗さんの顔を見れない。政宗さんが楽しんでくれたならそれでいいんだけど。
車から降りて、玄関のドアを開ける。
ん?なんだろう。誰もいないはずの家に人の気配が。
違和感を覚えつつドアに手をかける。
-ガチャ
「政宗ええぇー!!!!!!!」
「うわあっ!!?」
「・・・ちっ」
……誰だ!?
大声で政宗さんを怒鳴りながら、俺より大きな影が扉から飛び出してきた。
政宗さんは心底嫌そうな顔で舌打ちした。
「お前…何で俺の家知ってんだ、こら」
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