また、夜が明ける
shopping
「明日買い物連れてくんだって?」
「ああ。もうすぐ肌寒くなってくるからな」
「いいなあ、俺も連れてって」
「……お前も連れてくだろ。」
「リュウとして連れてってよ」
「……」
こういう時、俺はどんな言葉をかけてやったら良いのかわからない。1人の人間として愛したいから、両方の人格を好きになると決めた。リュウの言葉は、1人の人間を2つに分けろと言っていて。
俺はどうしたら良いんだ。
「ああ、連れてってやるよ。」
気休めだと分かっていても、そう約束するしかなかった。
「久しぶりに外にでるなあ…」
ここに来たばかりのときはあの男が怖くて、俺はなかなか外に出れずにいた。学校も行かせてもらえなかったし、今も行ってないから、外は久しぶり。少し怖い気持ちはあるけど―――政宗さんが一緒だし。
「隆一、行くぞ」
「あ、はい!」
そういえば。
昨日何でかわかんないけど、俺、政宗さんのベッドで寝てたんだっけ。体に疲労感とか違和感はないから、何もなかったはずなんだけど。
「相変わらず、すごい車ですね…」
「別に俺が買ったんじゃねーよ。まだ学生だしな」
「・・・えっ」
「ん?」
「政宗さん…学生って、」
「大学3年生だ。言ってなかったっけ?」
「初めて聞きましたけど…」
社会人だと思ってた…。
あれ?じゃあいつも仕事って出掛けてるのは何なんだろう?夏桐さんも…秘書って言ってたし。
「親がちょっと金稼いでるだけ。俺の力じゃねえんだよ」
そう言うと政宗さんは車を出した。
家の話をするときの政宗さんは、少し寂しそうだったけど、何か複雑な事情でもあるのかな。
それ以上は触れてはいけない気がして、俺は追及するのを止めた。
「着いたぜ」
俺たちが来たのは普通のショッピングモールだった。こんな黒光りの車じゃ逆に浮いてる。来られた方もたじたじって感じで。
「久しぶりのデートだ、楽しもうぜ。」
「で……っ!?」
「何だよ今更。」
俺の反応を見て、政宗さんはクスっと笑った。うわあ、爽やかな笑顔。言われてみれば、政宗さんは大学生らしいところがたくさんある。
こんなに素敵な人なのに、俺なんかが…契約とはいえ恋人でいいんだろうか。
「…隆一?どうした?」
「いえ、なんでも…」
「…ならいいんだが」
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