また、夜が明ける
contract
『お前がリュウと交代してた時、契約したんだ』
『契約…?』
『ああ。知らない間に交わされたんだ、お前は不満だろうが―――お前を守るためなんだ』
『……契約って、』
『俺がお前を匿う代わりに、お前は俺と恋人になることだ』
政宗さんは大抵昼から深夜まで仕事でいない。その間俺は暇を持て余すことになる。が、あの男とも母さんとも会いたくないから、外には出たくない。となるとすることは限られてしまう。
「晩ご飯とか、作ろうかな」
ポツリと1人呟く。
あんな家庭だから料理は得意だ。
椅子に掛けられたエプロンを手にとって着た。
ばんっ
「っ!!?」
突然玄関から大きな音が聞こえて、びくんと飛び上がってしまう。
慌てて玄関へ顔を出すと、そこにいたのはやっぱり、政宗さんだった。
「ただいま、隆一」
「え…、あの、…早い、ですね」
「ああ、頑張ったからな」
そう言って政宗さんは俺の頭をくしゃくしゃっとかき回した。何でだろう、どうしてかはわからないけど…安心するなあ。
情事の時の政宗さんは、正直怖い。3ヶ月前のことがトラウマになっているからだ。政宗さんに悪意は無いのだとしても、恐怖を抱いてしまう。
そもそも"契約"という言葉が心につっかかる。政宗さんは―――俺を誰かの代わりにしているんじゃないかとか、考えてしまうんだ。
(結局、いつも政宗さんのことばっかり考えてる)
「どうしたんだ?…そんなに俺のこと見つめて」
「いやっ、別に……な、なんとなくです」
「…ふーん」
それだけ言うと政宗さんは、自室に入ってしまった。俺がもっと気の利いたことが言えたらいいのに。
「……はあ。」
俺のため息だけが部屋に響いた。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!