また、夜が明ける
3
「…いただきます。」
「はい、どうぞ。」
愛想が良さそうな眼鏡の―――夏桐という男の人は、嬉しそうに言った。エプロン姿がよく似合う。彼は政宗さんの秘書さんだって言ってた。
「政宗、食べたらすぐ仕事ですからね」
「わかってるよ…ったく、」
―――呼び捨て。
気心の知れた関係なんだろうなあ。俺にもそんな友だちがいたらいいのに。
この光景にも慣れて3ヶ月。
そうあれは―――3ヶ月前。
俺の母親はいわゆるとっかえひっかえで、いつも家には見たことない男の人ばっかり。別にそれは俺にとって苦ではなかったし、どうでもよかった。
あれが起きたのは、いつだったっけ。
『隆一くん、だっけ』
『はい…何か用ですか。』
比較的長く続いている人だった。
話すのは初めてで、俺は少し緊張していた気がする。交流しようなんて思いもしなかったから。
『ねえ、マリまだ帰って来ないし―――僕と良いことしない?』
『…良いこと?』
ばっ
がたん!
男の人は俺が事の重大さを理解する前に、俺を押し倒した。整った顔が俺に近づいてくる。
『マリさんの血引いてるんだから…君もきっと才能あるよ』
『…っ!やっ、いや…!』
そう言って男の人は俺の体を弄り始めた。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。早く逃げ出したい。母さん、早く帰って来て。
こんなに母親を求めたのは生まれて初めてかもしれない。…なんて皮肉なんだろうか。
(隆一、一緒にどっかに逃げよう)
えっ?
この男の人の声じゃない。でも知ってる。懐かしくて、頼りになる――――ああ、リュウだ。
(交代して)
そこからは記憶がない。
気がつくと政宗さんの家にいた。目を覚ました正にその時、俺は裸で政宗さんと抱き合ってベッドで寝ていた。
『え…っ、なに…!?』
『ん…?ああ、おはよう、リュウ…いや隆一か?その反応』
『えっ…あ、の』
『慌てんなよ、後でゆっくり話してやるから』
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