また、夜が明ける
classA
「まず、Aクラスの担任の所に連れていく。俺の役目はそこまでだ。」
先頭を歩きながら、相馬先輩は淡々と言う。
担任の先生か…中学校すぐ辞めちゃったから、小学校の時の記憶しか無い。
いつも子どもの味方で、ヒーローみたいな人だったっけ…憧れてたなあ。
-ガラッ
「失礼します。」
「し、失礼します!」
いつの間にか職員室に着いていた。
慌てて先輩の真似をして同じことを言ってみる。
視線が一気に俺に集中するのがわかる。
どうしよう。緊張する―――――!
-ぽん、
「ははっ落ち着けよ。お前、おもしろいな」
「そ、相馬先輩…」
頭をわしゃわしゃとかきむしられ、髪がボサボサになる。でも、さっきまでの緊張が嘘みたいにどっかにいってしまった。
「藍田先生いらっしゃいますか。」
「おーいるぞー!例の転校生か?」
いかにも体育会系の先生がこっちに近付いてくる。で、でかい。季節は秋、のはず。先生を見ていると10月とは思えない。それくらいまだ肌が浅黒い。
大股ですぐ俺の真正面に立つ。
じっと見られたので俺も見つめ返す。
「姫野っつったっけ?お前」
(俺の名字ってそんなんだったなあ)
あまり呼ばれ慣れない呼び名に違和感を感じなから、俺は頷いた。
藍田先生は上から下まで俺を見て言った。
「こりゃモテそうだなー精々気を付けるこったな」
先生の見立てに疑問を感じながら、取り敢えず手を差し出す。さっきすももさんに習った通りに。
先生も手を差し出して俺の手を握った。
「よろしくな、転校生。何かあったら俺に言えよー絶対守ってやっからよ」
「は、はい!」
男前な先生だ…
というか握られている手が痛い。
暫くしてやっと解放された。
「相馬、サンキューな。お前教室戻っていいぞ」
「わかりました。―――失礼しました」
職員室を出ようとする相馬先輩の腕を咄嗟に掴んだ。先輩は驚いた顔で俺を見ている。
当然だ。
「先輩、あっああありがとうございました!」
精一杯感謝の気持ちを伝える。
どもった上に腕を掴んだ手は震えていて。
恥ずかしい。
「本当におもしろい奴だな、お前。俺は2年のAクラスだ。よろしく」
笑顔でそれだけ言って去ってしまった。
みんな本当にいい人だなあ。
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